日本の歴史はいつから? 文献と遺跡をどう見る
文献史料:文字によって残された人びとの過去の日常記録
先史時代:文字資料がなく遺物だけでたどる長い人類史の時代
考古学:遺跡や遺物から過去の社会を体系的に復元する学問
「日本の歴史はいつ始まるのか」と聞かれると、多くの人は最初の天皇や『古事記』を思い浮かべるかもしれません。けれども、実際に文献史料として頼れる記録は、せいぜい今から1500年前くらいまでしかさかのぼれません。それより古い世界を知るには、文字ではなく考古学の出番になります。
さらにややこしいのは、「誰を日本の歴史の登場人物とみなすか」という問題です。琉球やアイヌの人びとのように、近代になるまで自分を日本人と考えていなかった共同体もいます。そうした多様な人びとを含めて歴史を描くには、「日本」という枠組みの前提を疑いながら、先史時代の長さにも目を向ける必要があります。
🔍 つまりどういうこと?🔍
文献だけを見ると日本の歴史は一気に短く見えますが、文字を持たない長い時間を含めれば、物語の舞台は何万年も広がります。どこからを日本の始まりと呼ぶかは、前提の置き方次第だという感覚を持ち、軽々しく線を引かない姿勢が大切です。
── では、歴史とナショナリズムの関係を見てみましょう。
遺跡捏造はなぜ起きた? 日本史の教訓
旧石器ブーム:日本各地で旧石器遺跡発見が相次いだ時期が続いた
捏造事件:研究者が偽の遺物を埋めて発見したように見せた不正
ナショナリズム:自国の歴史や文化を特別だと強く信じる考え方
2000年、毎日新聞は考古学者の藤村新一氏が旧石器遺物を埋めてから掘り出す様子を撮影し、日本中を驚かせました。藤村氏はそれまで、「神の手」と呼ばれるほど多数の早期遺物を見つけた人物でしたが、その一部が捏造だったことが明らかになり、戦後の旧石器ブームは大きく揺らぎます。
なぜこんな不正が長く見逃されたのか。その背景には、「日本の旧石器文化は中国や韓国より古い」と信じたい空気がありました。誇りそのものは悪くありませんが、ナショナリズムが強くなりすぎると、都合のよい証拠だけを信じてしまいます。この事件は、考古学のデータを読むときこそ冷静さが必要だという教訓を残しました。
🔍 つまりどういうこと?🔍
藤村新一の捏造事件は、一人の研究者の不正にとどまらず、「日本は特別であってほしい」という期待が科学の判断を曇らせる危険を示しました。愛着と誇りは持ちつつも、証拠の扱いだけはクールに保つ視点が、歴史と付き合うときの安全装置になります。
── では、旧石器から中石器への変化をたどってみましょう。
旧石器から何が変化? 中石器時代をたどる
旧石器時代:打製石器を使い移動しながら暮らした長い時代
メガファウナ:氷河期に生きた大型のシカやゾウなど巨大動物
中石器時代:旧石器と縄文の間に位置する環境と暮らしの移行期
今から約3万5000〜4万年前、日本列島はアジア大陸と陸続きでした。人びとは陸の橋を渡り、メガロケロス・ギガンテウスやナウマンゾウのような巨大な動物を追ってやってきたと考えられます。メガファウナを言葉と協力で狩る力を手に入れた一方で、その結果として多くの大型動物を絶滅させてしまいました。
旧石器時代の人びとは、関東平野のような平らで川の多い土地を拠点に、石器を持って移動しながら暮らしていました。しかし約1万2000年前、氷河期の終わりとともに気温が上昇し、海面が上がり、動物相も植生も大きく変わります。こうして中石器時代と呼ばれる、狩猟採集から次の社会へのゆるやかな移行期が始まっていきました。
🔍 つまりどういうこと?🔍
日本列島の最初の住民は、いきなり稲作農民として現れたわけではなく、旧石器時代の長い営みのなかで環境に合わせて暮らし方を変えてきました。巨大動物の絶滅や温暖化は、その変化を後押しした要因です。歴史の「始まり」は、人間と環境との長い対話の一場面として見えてきます。
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── 最後に、この記事のまとめとFAQでおさらいしましょう。
まとめ:日本の始まりをどう捉えるか
日本の歴史をどこから始めるかという問いは、単に最初の年号を決める作業ではありません。文献と考古学、それぞれの限界や魅力を意識しながら、ナショナリズムの影響も踏まえて証拠を読み直すことで、「日本の始まり」を一つの答えではなく複数の視点として味わい、比較し、自分の納得できる像を描き直せるようになります。
歴史の始まりの線引きは立場で変わる
文献と考古学の長所と弱点を意識する
誇りとナショナリズムを静かに区別する
ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。
Q1.日本の歴史はいつから始まると考えるのが一般的ですか?
教科書では、文字資料が揃う飛鳥時代以降を中心に叙述することが多いですが、人類の居住という意味では旧石器時代までさかのぼる見方もあります。何を基準にするかで「始まり」は変わります。
Q2.先史時代と歴史時代の違いは何ですか?
先史時代は文字資料がなく、遺跡や遺物など物的証拠から推理する時代を指します。歴史時代は文献史料が増え、人びとの言葉や制度が直接読めるようになる段階です。
Q3.ナショナリズムに振り回されずに歴史を学ぶにはどうすればよいですか?
自分の国への愛着を否定する必要はありませんが、気になるテーマでは複数の研究書や他国の視点にも触れ、証拠と感情を意識的に切り分けて読むことが大切です。データの不確かさも一緒に確認しましょう。
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023年
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024年
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます。
[この記事を書いた人]
Alex Kei(学び直し歴史ライター)
早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。👇noteではこんな話をしてます(目次)👇
「歴史はどこから?」というモヤモヤ「文字がない時間」を考古学で読みとく
旧石器時代という「長くて静かな時間」
氷河期の終わりと「中石器時代」
まとめ:歴史のスタートラインを自分のものにする
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