鎌倉幕府崩壊の理由!土地不足と相続問題の不満|5分de探究#041

鎌倉時代
鎌倉幕府崩壊の理由!土地不足と相続問題の不満|5分de探究#041
【この記事は5分ほどで読めます】
もし会社が給料を払えなくなったらどうしますか?
鎌倉幕府の崩壊も実はこれと同じでした。土地という報酬が尽きた時、武士たちが選んだ意外な生き残り策とは。組織崩壊の裏側をサクッと解説します。

鎌倉幕府の求心力は、武士への「土地の給付」に依存していましたが、敵対勢力の消滅とともに分配できる土地が枯渇し、体制の維持が困難になりました。さらに、子弟全員に財産を分ける「分割相続」が武士の所領を細分化させ、経済的な困窮を招きます。

生活に追われた武士は荘園の年貢を横領するようになり、社会秩序が乱れました。一方、当時の人口の大半を占める農民の姿は、識字率の低さ支配層による記録の偏りにより、実態が不透明なままです。これら複合的な要因が幕府崩壊へ繋がりました。

▼ この記事でわかること

  • 土地不足が招いた幕府倒壊の理由
  • 武士を貧困に追いやる相続の正体
  • 歴史書が語らない一般庶民の裏話

📚お読みになる前に📚

信頼崩壊の引き金「土地不足」

御恩と奉公:将軍が土地所有を保証し、御家人が軍役で報いるという、鎌倉幕府の根幹をなす主従関係の制度。
承久の乱:1221年、後鳥羽上皇が倒幕を目指して挙兵するも敗北し、幕府の支配権が西国へ拡大した戦い。
宝治合戦:1247年、北条氏が有力御家人の三浦氏を滅ぼし、執権政治の基盤をより強固にした大規模な武力衝突。

源頼朝が東国の武士たちをまとめ上げることができた最大の理由は、彼らに「雇用の安定」つまり御恩と奉公による土地の保証を約束したからです。初期の幕府は、平氏の滅亡や承久の乱での勝利によって敵の領地を没収し、それを味方の武士たちへ再分配することで、彼らの「もっと土地が欲しい」という飽くなき欲求を満たし続けることができました。


しかし、国内の敵対勢力が一掃されると、新たな給付源がなくなります。宝治合戦で三浦氏が滅ぼされたのを最後に、大規模な所領の再分配を行う機会は激減しました。土地という報酬が出せなければ、武士の忠誠をつなぎとめることはできません。幕府という巨大な組織は、平和が訪れるとともに「求心力を失う」という皮肉な構造的弱点を抱えることになりました。

🔍 つまりどういうこと?🔍

鎌倉幕府は「戦いに勝って敵の土地を奪い、味方に配る」というサイクルで支持を集めていました。しかし、敵がいなくなり、新たな土地が得られなくなると、武士たちに報酬を渡せなくなり、幕府への信頼と存在意義が揺らぎ始めたのです。これにより御家人たちの不満は高まり、体制は内部から崩れ始めました。


所領を分割して子供たちに分け与えることに頭を悩ませる鎌倉武士のイメージ


── では、なぜ武士たちはそこまで土地に困窮したのか、その家庭の事情を見てみましょう。

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生活を追い詰める「分割相続」

分割相続:親の財産を子全員で分ける慣習で、代を重ねるごとに所領が細分化し一族が窮乏する原因となった。
惣領:一族を統率する本家の長であり、戦時には分家の庶子たちを率いて軍事行動を行う武士団のリーダー。
地頭:荘園や公領の管理・徴税・警察権を持つ役職で、しばしば年貢を横領して領主である貴族と対立した。

当時の武士社会では、女子を含む子供全員に財産を分ける分割相続が一般的でした。これは公平で先進的なシステムでしたが、代を重ねるごとに一人当たりの取り分が小さくなるという欠点がありました。一族のリーダーである惣領は、細分化して縮小していく所領だけでは一族全員を養うことが難しくなり、常に経済的な危機感にさらされていたのです。


減っていく収入を補うため、現地で徴税の実権を握る地頭たちは、本来京都の貴族に送るべき年貢を着服し始めます。「訴えられるものならやってみろ」とばかりに開き直り、強引に利益を確保しようとする者も現れました。幕府もこれを完全には取り締まれず、土地と富をめぐる争いは泥沼化していきます。相続制度の限界が、武士を「横領」へと走らせたのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

子供全員に土地を分ける習慣のせいで、武士の持ち分はどんどん小さくなり、貧乏になっていきました。その穴埋めをするために、彼らは管理している土地からの税金をネコババするようになり、社会全体の秩序が乱れていったのです。生活苦が武士を犯罪行為へと走らせ、幕府の統制力も限界を迎えることになりました。

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年貢を納める中世の農民と、それを厳しくチェックする役人の姿


── では、武士以外の大多数の人々、つまり民衆はどのような生活をしていたのでしょうか。

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歴史に埋もれた「中世の民衆」

識字率:文字を読み書きできる人の割合のことで、中世においては武士の上層部や僧侶など一部に限られていた。
文書:権利や契約を証明する記録であり、中世社会では土地や年貢を巡る訴訟において不可欠な証拠となるもの。
公文・下司:荘園領主の代わりに現地で実務を行う下級役人で、年貢の徴収や管理を担い、民衆と直接接触した。

私たちが歴史で学ぶのは主に武士や貴族の姿ですが、当時の人口の大部分は農民でした。しかし、彼らの生活実態はよくわかっていません。その大きな理由は低い識字率にあります。彼らは自分たちの言葉で記録を残すことができず、歴史家が頼る文書資料のほとんどは、税を取り立てる側の役人や貴族によって書かれたものだからです。


都の貴族は、現地の管理を公文・下司といった代官に任せきりで、農民と直接会うことは稀でした。結果として残された記録は「税を払わない不届き者」といった、支配層側からの偏見に満ちた内容になりがちです。農民と商人の区別さえ曖昧な税制の中で、彼らがどう生き抜いていたのか、エリート層のフィルターを通さない「生の声」を聞くことは困難です。

🔍 つまりどういうこと?🔍

昔の一般庶民のことは、あまり詳しく分かっていません。彼らは文字を書けず、記録を残したのは税金を取る偉い人たちだけだったからです。そのため、「税金を誤魔化すズルい奴ら」という一方的な見方しか残っていないことが多いのです。歴史の教科書には載らない、名もなき人々の姿は、今も霧の中です。


── 👀 読むのが疲れてきませんか? 「歴史は好きだけど、文字を読む時間はあまりない…」 そんな方には、耳で聴く読書がオススメ。

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  • STEP 2.この記事で理解を深める5min

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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:鎌倉幕府の限界と実態

鎌倉幕府の崩壊は、単なる戦争の敗北ではなく、御家人たちに土地を与えられなくなったという「経済的な契約不履行」が根本原因でした。さらに、分割相続による困窮が武士を不法行為に走らせ、社会の混乱を加速させました。一方、それを支えた民衆の姿は、記録の偏りによって歴史の闇に隠れたままです。これらは現代の組織論にも通じる課題と言えるでしょう。
この記事のポイントは、以下の3つです。

再分配する土地の枯渇
分割相続による困窮化
記録に残らぬ民衆の姿

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜ武士は土地を欲しがったのですか?

当時は農業が経済の中心であり、土地の権利こそが収入を得るほぼ唯一の手段だったからです。一族を養うためには、少しでも多くの農地が必要でした。

Q2.地頭と荘園領主はどちらが偉いのですか?

法的には荘園領主(貴族)が持ち主ですが、現地で武力を持つ地頭(武士)が実効支配を強めました。地頭は幕府の役人なので、領主も手出しが困難でした。

Q3.歴史資料を読むときに気をつけることは?

「誰が書いたか」を意識することです。多くは支配層が自分たちの都合で書いたものなので、書かれていない民衆側の視点を想像する必要があります。

[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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