オランダ貿易と蘭学!出島がもたらす情報と技術|5分de探究#078

江戸時代
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オランダ貿易と蘭学!出島がもたらす情報と技術|5分de探究#078
鎖国の日本は、本当に世界から取り残されていたのでしょうか?


実は出島を通じて、海外の最新情報は筒抜けでした。貿易がもたらした豊かな知識と、平和を脅かす黒船の影を”5分”で紐解きます。

▼ この記事でわかること

Q. 鎖国の窓口・出島がもたらした情報と技術の正体とは?


幕府は風説書で世界を知り蘭学が発展。しかしフェートン号事件で、知識だけでは国を守れない現実が露呈します。

鎖国下の日本において、唯一の西洋との窓口であったオランダ。彼らが拠点とした長崎の出島は、単なる貿易の場ではなく、幕府が海外の最新情報を入手するための重要な機関でした。杉田玄白らによる解体新書の翻訳など、技術と知識の交流が進みます。

しかし、平和な時代も束の間、ロシアの接近やイギリス軍艦によるフェートン号事件が発生しました。オランダを通じて見えていた世界の情勢が、徐々に日本の脅威へと変わっていく様子を、当時の外交や事件を通して解説します。

📚お読みになる前に📚

貿易の窓口・出島がもたらす情報と「技術」

VOC:オランダ語の頭文字で、インドネシアを拠点に貿易や統治を行ったオランダ東インド会社。
カピタン:長崎の出島に駐在したオランダ商館長のことで、定期的に江戸へ参府し将軍に謁見した責任者。
オランダ風説書:オランダ船が入港するたびに提出させ、幕府が海外の情勢やニュースを把握した報告書。

鎖国令によって扉が閉ざされた日本に、唯一残った西洋の窓口がオランダでした。彼らの貿易を仕切っていたのはVOCと呼ばれる組織で、単なる会社ではなく、領土を統治する政府のような巨大組織でした。幕府は彼らを長崎の出島に住まわせ、厳重に管理することで、貿易の利益と同時に、世界で起きている出来事の「情報」を独占しようとしたのです。


特に重要だったのが、カピタンに提出させたオランダ風説書です。幕府はこれを読み解くことで、日本にいながらにして海外情勢を把握し、国防に役立てていました。また、カピタンを定期的に江戸へ呼びつけることは、オランダという「異国」さえも従えているという、幕府の権威を内外に示す「政治的なパフォーマンス」の意味合いも強かったのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

幕府はオランダ商館を直轄地の長崎・出島に置くことで、貿易利益だけでなく海外情報を独占的に入手していました。商館長を定期的に江戸に呼びつけることは、情報収集の重要な機会であると同時に、オランダさえも従えているという幕府の権威を、内外に誇示するための外交儀礼としても利用されていたのです。


江戸城の広間で、将軍の前でオランダ人が奇妙な動きをしている様子を、ふすまの陰から女性たちが笑って見ているイラスト


── では、実際の江戸での謁見がどのようなものだったのか、驚きの実態を見てみましょう。

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江戸参府で演じさせられた異国の「見世物」

ケンペル:江戸に参府して将軍に謁見し、その奇妙な体験や日本事情を詳細に記録したドイツ人医師。
徳川綱吉:文治政治を推進する一方で、オランダ人に対して過剰な好奇心を示した江戸幕府の5代将軍。
謁見:身分の高い人に公式に会うこと。ここでは将軍がオランダ商館長らと対面する儀式のこと。

ドイツ人医師のケンペルが書き残した記録には、将軍・徳川綱吉との謁見の様子が生々しく描かれています。綱吉は彼らに、真面目な質問だけでなく「踊れ」「歌え」「かつらを取れ」「互いにキスをしろ」などと次々に命令しました。これは単なる好奇心の発露という以上に、異国の人間を意のままに操り、将軍の「絶対的な権力」を楽しむ宴でもあったのです。


オランダ人たちは、貿易の権利を維持するために、この屈辱的とも言える「芸」を受け入れざるを得ませんでした。彼らは将軍や奥女中たちの前で、まるで「見世物」のように振る舞い、ヨーロッパの挨拶や習慣を演じて見せました。当時の外交関係は、対等なパートナーシップとは程遠い、幕府による一方的な「管理と支配」によって成り立っていたことがわかります。

🔍 つまりどういうこと?🔍

将軍との謁見は、厳格な儀式であると同時に、オランダ人が将軍を楽しませるためのショーの側面もありました。ケンペルらの記録からは、幕府が彼らを対等な貿易相手としてではなく、コントロール可能な興味深い観察対象や「見世物」として扱っていた、冷徹で一方的な「力関係」が読み取れます。

💡 情報が混み合っていませんか?細かい時系列は、年号整理ページ にまとめてあります。是非ご活用ください。


解体新書の正確な図版を見て衝撃を受けている杉田玄白と、その背後に黒船が迫ってくる様子を表したイラスト


── では、そんなオランダ貿易がもたらした光と、その後に訪れる影について見てみましょう。

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蘭学の発展と海から忍び寄る「欧米列強」

杉田玄白:オランダ語の医学書を翻訳し、日本の医学に革命をもたらした解体新書を出版した蘭学医。
解体新書:西洋の正確な解剖図を翻訳した書物で、実証的な科学精神が日本に広まるきっかけとなった本。
フェートン号事件:イギリス軍艦がオランダ船を追って長崎に侵入し、幕府の海防体制の不備を露呈させた事件。

オランダからもたらされた書物は、日本の知識人たちに強烈な衝撃を与えました。杉田玄白らが翻訳した解体新書は、それまでの漢方医学とは異なる、解剖に基づいた正確な人体図を示しました。これは単なる医学の進歩にとどまらず、西洋の技術を積極的に学ぼうとする「蘭学」ブームを巻き起こし、日本の「知的鎖国」を内側からこじ開けていったのです。


しかし18世紀末、状況は一変します。北からロシア、海からはイギリスが日本近海に出没し始めます。特にフェートン号事件では、長崎奉行が責任を取り自害する事態となりました。オランダを通じて情報を得ていた幕府でしたが、圧倒的な武力を持つ「欧米列強」の接近に対し、自国の防衛体制がいかに「脆弱」であるかを、残酷なまでに思い知らされたのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

杉田玄白らによる蘭学の発展は近代化の礎となりましたが、同時に世界の荒波も押し寄せていました。フェートン号事件などの外圧は、巧みに構築されていたはずの鎖国体制が、近代的な軍事力を持つ列強の前では、いかに無力に近いものであるかを残酷なまでに「証明」してしまったのです。


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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:出島から見えた世界情勢の「変化」

今回は、オランダ貿易の裏側と、そこから始まった蘭学、そして迫りくる外圧について解説しました。出島は単なる貿易拠点ではなく、日本が世界とつながる唯一のへその緒のような存在でした。しかし、その細い糸だけでは支えきれないほど、世界の動きは激しくなっていきます。知識だけでは国を守れないという厳しい現実が、そこには突きつけられていました。
この記事のポイントは、以下の3つです。

貿易を通じた幕府の情報独占
支配関係を示す参府の儀礼
科学の発展と国防の限界

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜオランダだけが貿易を許されたのですか?

オランダは布教を行わず、純粋に貿易による利益を追求したからです。幕府にとって政治的な脅威が少ないと判断されました。

Q2.「蘭学」とは具体的にどのような学問ですか?

オランダ語を通じて学ぶ西洋の学問の総称です。医学、天文学、物理学など、実証的な科学知識が中心でした。

Q3.フェートン号事件は、その後日本にどんな影響を与えましたか?

日本の海防がいかに手薄かを露呈させました。これ以降、幕府は異国船打払令を出すなど、対外姿勢を硬化させていきます。

各時代の FAQ は、FAQまとめページ で一気見できます。是非ご活用ください。
[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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