▼ この記事でわかること
神話には当時の地理認識や死生観が色濃く反映されており、歴史的事実そのものではありませんが、古代の人々が世界をどう認識していたかを知る貴重な手がかりとなります。
天皇家の権威はなぜ神話と結びつく?
皆さんは、日本の天皇家がいつ始まったのか、明確に答えられますか?実は、歴史学者でさえ確実なことは言えません。現代の日本では、天皇は憲法で「象徴」と定義されていますが、戦前においては統治権を持つ絶対的な存在でした。さらに時代を遡り、武士が政治を行っていた江戸時代でさえ、幕末の志士たちは尊王攘夷を掲げ、天皇を精神的な支柱としました。
なぜ、これほど長く権威が続いているのでしょうか。それは、天皇家の正当性が現実の政治力だけでなく、「神々の世界とつながる血統」という神話に基づいているからです。つまり、日本の歴史を深く理解するためには、事実としての歴史だけでなく、人々が信じてきた「物語としての歴史」を知る必要があるのです。
🔍 つまりどういうこと?🔍
天皇家の起源が不明確であることは、むしろその神秘性を高め、長期間にわたる権威の源泉となってきました。政治的な実力者が変わっても、神話に裏付けられた天皇の存在は、日本という国のアイデンティティの根幹にあり続けてきたのです。
── では、その権威づけのために書かれた「公式な歴史書」の中身を覗いてみましょう。
「国生み神話」とはどんな内容か?
天皇家の起源を「公式」に定めたのが、8世紀の奈良時代に作られた古事記と日本書紀です。ここで語られるのが、有名なイザナギとイザナミによる「国生み」です。二人の神が「天の沼矛(あめのぬぼこ)」で海をかき回して島を作り、夫婦となって次々と国土を生み出していきます。
興味深いのは、この神話で生まれた日本が大八洲と呼ばれ、今の日本地図とは異なることです。本州、四国、九州などは含まれますが、北海道や沖縄(琉球)は登場しません。これは、8世紀当時のヤマト政権が支配していた、あるいは「自分たちの国」と認識していた範囲がどこまでだったかを如実に表しています。神話は単なる空想ではなく、当時の地理感覚を反映した資料でもあるのです。
🔍 つまりどういうこと?🔍
『古事記』や『日本書紀』は、天皇家と日本の成り立ちを神話として体系化した、最初の国家プロジェクトでした。そこで定義された「日本」の範囲を見ることで、当時の人々にとっての国土の境界線や、国家意識の及ぶ範囲を知ることができます。
── では、国づくりを終えた神々の身に降り掛かった、衝撃的な悲劇についてお話ししましょう。
黄泉の国と三貴子の誕生劇って何?
国生みは、火の神カグツチを出産したイザナミが火傷で亡くなるという悲劇で終わります。夫のイザナギは連れ戻しに黄泉の国へ向かいますが、腐敗した妻の姿を見てしまいます。恐怖して逃げ帰ったイザナギは、死の穢れを落とすために川で禊を行い、この時、左目から太陽神アマテラス、右目から月神ツクヨミ、鼻から嵐の神スサノオという三貴子が誕生したのです。
この物語は、死への根源的な恐怖と、水による浄化という神道の基本概念を教えてくれます。また、アマテラス(昼)とツクヨミ(夜)が喧嘩別れして昼夜が生まれたり、スサノオが暴れたりと、自然現象を神々に投影しています。そして、アマテラスが後の天皇家の直接の祖先とされることで、皇室は「太陽神の子孫」という最強の正当性を手に入れたわけです。
🔍 つまりどういうこと?🔍
イザナギの禊から生まれた三貴子の物語は、日本の神々のヒエラルキーを決定づけました。特に太陽神アマテラスを皇室の祖とすることは、天皇がこの国を治めることの「神話的な根拠」となり、その権威を不動のものにしたのです。
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── 最後に、この記事のまとめとFAQでおさらいしましょう。
まとめ:神話を知れば日本の成り立ちが見えてくる
神話は単なる「作り話」ではありません。そこには古代の人々が世界をどう理解し、国家というシステムをどう正当化しようとしたかという「意図」が隠されています。天皇家の起源を神の時代に求めることで、日本という国の形が作られていったのです。
この記事のポイントは、以下の3つです。
‣歴史書は統治の正当性を示すため
‣神話の地図は当時の日本の支配領域
‣自然現象や死生観が神話に投影されている
ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。
Q1.古事記と日本書紀の違いは何ですか?
古事記は国内向けに物語調で書かれ、日本書紀は海外(主に中国)向けに正当な歴史書として漢文で書かれたという違いがあります。
Q2.なぜ神話に北海道や沖縄が出てこないのですか?
8世紀当時のヤマト政権にとって、それらの地域はまだ政治的な支配が及ばない「異国」として認識されていたためです。
Q3.イザナギが黄泉の国から逃げる話には元ネタがありますか?
ギリシャ神話のオルフェウスの物語など、世界各地に似た話が存在します。これは死に対する人間の普遍的な感情を表していると言えます。
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます。
[この記事を書いた人]
Alex Kei(学び直し歴史ライター)
早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。👇noteではこんな話をしてます(目次)👇
日本の象徴なのに出発点が見えない?古事記と日本書紀はどんな物語?
イザナギイザナミはどう日本をつくった
黄泉の国と三貴子の神話と生死の意味
まとめ:天皇家のルーツを神話から読み直す視点を持つ
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