天皇家の始まりはどこから? 神話と記録を整理|5分de探究 [4]

古墳‣飛鳥‣奈良時代
天皇家の始まりはどこから? 神話と記録を整理|5分de探究 []
天皇家の始まりはどこからなのか? 現代の象徴としての姿と、神話に語られたルーツをやさしく整理していきます。

現代の日本国憲法では、天皇は「日本国の象徴」として位置づけられています。しかし、明治時代の帝国憲法下では、天皇は国の統治や戦争の正当性を支える絶対的な権威として理解されていました。さらにさかのぼると、鎌倉時代や江戸時代でも、政治の実権を持たない時期でさえ天皇家は「古くから続く特別な家」として尊ばれていました。

それほど長く続いてきたにもかかわらず、「天皇家はいつ、どこで始まったのか」という問いには、実ははっきりした答えがありません。皇室の起源を語る物語は、『古事記』や『日本書紀』に残されていますが、そこには神々が登場し、象徴的な場面が多く描かれています。ですから、学者たちは神話をそのまま事実とはみなさず、歴史資料や考古学の成果と照らし合わせながら慎重に読み解こうとしているのです。

天皇家の始まりは? 神話の物語を整理

天皇家:日本の政治と文化の中心として象徴的地位を担う家系
象徴天皇:日本国民統合のよりどころとして位置づけられた立場
尊王思想:天皇を重んじる姿勢を政治や社会の価値観の軸に据える考え方

今の日本国憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である」と書かれています。つまり現代の天皇家は、政治を実際に動かす存在ではなく、人びとのあいだをゆるやかにつなぐ象徴として理解されています。しかし明治時代から第二次世界大戦の終わりまでは、天皇の名のもとに帝国の拡大や戦争が進められ、「天皇家こそがすべてを正当化する根拠だ」とみなされていました。

さらに過去にさかのぼると、鎌倉時代や江戸時代のように武家政権が実権を握っていた時期でも、天皇家の権威は完全には失われませんでした。政治的な力を持たない時期であっても、「古くから続く特別な家」として神秘的な威信を保ち続けていたのです。幕末に「尊王攘夷」というスローガンが広まったのも、天皇家を日本の伝統と精神世界をつなぐ存在とみる意識が根底にあったからだと言えるでしょう。

🔍 つまりどういうこと?🔍

天皇家は、政治の中心にいた時代も、表舞台から退いていた時代も、ずっと特別な家として意識され続けてきました。そのため、多くの日本人にとって天皇家は歴史と精神文化をつなぐ象徴になっているのです。一方で、「そんな特別な家がいつ、どのように始まったのか」は、簡単には答えが出ない大きな問いとして残っています。


天皇家の始まりを本で調べようとしている人のイメージイラスト

── では、天皇家の始まりを語る古い書物を見てみましょう。

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古事記と日本書紀は? 天皇家の公式物語

古事記:712年に成立し神々と天皇家の物語を伝える書物
日本書紀:720年に完成した編年体で朝廷の歴史をまとめた史書
奈良時代:飛鳥から続く律令国家が都を奈良に置いた時期

天皇家の始まりを知ろうとすると、多くの人が最初に手がかりにするのが『古事記』と『日本書紀』です。『古事記』は712年、『日本書紀』は720年に完成し、いずれも奈良時代に編まれました。中国の王朝が自分たちの歴史書を作ったように、日本でも国家と天皇家の来歴をまとめる試みとして作られたと考えられています。そこには、神々の系譜から天皇家につながる流れが物語として描かれています。

しかし、歴史学の視点から見ると、両方の書物には注意深く扱うべき点があります。まず、書かれた時期が天皇家の起源とされる出来事から数百年も後であること。さらに、物語の中には神々が頻繁に登場し、天皇の権威を高めるための政治的メッセージが読み取れる場面も少なくありません。だからこそ、多くの研究者は『古事記』『日本書紀』を単なる事実の記録としてではなく、「当時の人びとが天皇家をどう語ろうとしたか」を知る手がかりとして読もうとしています。

🔍 つまりどういうこと?🔍

『古事記』と『日本書紀』は、天皇家の歴史を知るうえで欠かせない資料ですが、そのまま事実の記録として受け取るのは難しい書物でもあります。そこには信仰と政治が交差する物語が詰め込まれており、「昔の人は天皇家をどう位置づけていたのか」を読み解くことで、私たちは当時の日本社会の姿もあわせて想像できるのです。


イザナギとイザナミが国づくりをしている場面のイラスト

── では、そこに描かれた国づくりの神話をのぞいてみましょう。

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イザナギとイザナミは? 国づくり神話

神世七代:世界の始まりに現れる七代の神々をまとめた呼び名
天の沼矛:神々が混沌とした海をかき回すために用いた宝の矛
大八洲:本州など八つの島を日本の中心とみなした古い地理観

『古事記』『日本書紀』では、日本の歴史はまず「神々の時代」から始まります。世界が生まれたあと、「神世七代」と呼ばれる七代の神々が順に現れ、その最後に登場するのがイザナギとイザナミという男女の神です。二柱は、まだ形の定まらない世界を整え、日本の島々を生み出す役割を担います。彼らは天の沼矛という矛を海に差し入れてかき回し、その先から滴ったしずくが固まって最初の島「オノゴロ島」ができたと語られます。

その後、イザナギとイザナミは夫婦として結ばれ、本州・四国・九州に、淡路島や対馬、壱岐、隠岐諸島、佐渡島を加えた「大八洲」を次々と生み出したとされています。ここで注目したいのは、北海道や沖縄がこのリストに含まれていないことです。物語が編まれた奈良時代の人びとにとって、これらの地域はまだ「日本」の外側にある世界として認識されていた可能性があります。神話は、地図の正確な写しではなく、当時の人びとが思い描いた日本の姿を映し出していると考えられるのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

イザナギとイザナミの物語は、日本列島がどう形づくられたかだけでなく、「生と死の境目はどこにあるのか」という問いも含んでいます。国づくりの場面には当時の地理観が、黄泉の国の場面には出産や死への不安が映し出されており、神話をたどることで古代の人びとの世界の見え方を少しずつ想像できるようになります。


── 👀 読むのが疲れてきませんか? 「歴史の流れは好きだけど、文字を読む時間はあまりない…」 そんな忙しい方には、耳で聴く読書がおすすめです。

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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:天皇家の始まりをどう見る?

ここまで見てきたように、天皇家は長い時間を通じて日本社会の中心的な象徴であり続けてきましたが、その始まりについては『古事記』『日本書紀』に描かれた神話を通してしかたどることができません。物語には当時の人びとの地理観や生と死への感覚が織り込まれており、私たちは神話と歴史資料を重ねながら、天皇家のルーツを少しずつ立体的にイメージしていくことになります。

天皇家の歴史は神話と現実が重なり合う
古い書物には政治的意味もにじむ
神話は過去の人びとの世界観の手がかり

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.天皇家の始まりがはっきりしないのはなぜですか?

天皇家の起源を直接記録した同時代の資料が残っておらず、現在読めるのは後の時代にまとめられた物語や記録だからです。そのため、学者たちは神話・文献・考古学を組み合わせて慎重に推測しています。

Q2.『古事記』と『日本書紀』はどんな点に注意して読むべきですか?

どちらも天皇の権威を高めたい朝廷側の視点で作られている点に注意が必要です。神々が積極的に登場する場面は、事実の報告というより信仰と政治を表現した物語として読むと理解しやすくなります。

Q3.神話を学ぶことは、現代の私たちにどんなメリットがありますか?

神話は、昔の人びとが世界をどう理解し、どんな不安や願いを抱いていたかを映し出す鏡です。イザナギやイザナミの物語をたどることで、私たちは自分たちの価値観のルーツを振り返り、歴史をより立体的に味わえるようになります。

[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023年
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024年
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます。

[この記事を書いた人]

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。


── 最後まで読んでくれたあなたへ。「5分の枠」には収まりきらなかった、もっとディープな歴史の裏側を覗いてみませんか?

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👇noteではこんな話をしてます(目次)👇

日本の象徴なのに出発点が見えない?
古事記と日本書紀はどんな物語?
イザナギとイザナミはどう日本を作ったか
黄泉の国と三貴子の神話は生死の意味を
まとめ:天皇家のルーツを神話から読み直す視点を持つ


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