明治の工業化と財閥誕生!経済発展が遅れた理由|5分de探究#095

明治・大正
明治の工業化と財閥誕生!経済発展が遅れた理由|5分de探究#095
明治維新後すぐに工場が建たなかった理由をご存知ですか?


行政改革や巨額の借金処理に追われた苦難の10年。財閥誕生の裏側と、政府主導で進んだ日本独自の経済発展の謎を”5分”で紐解きます。

▼ この記事でわかること

Q. 明治の工業化はなぜ遅れ、財閥はどう誕生したのか?


廃藩置県等の基盤整備や借金処理に追われ、官営事業払下げを受けた政商たちが財閥へと成長したからです。

明治日本の近代化は、直ちに工業化へ直結したわけではありません。1870年代は廃藩置県地租改正といった行政・財政基盤の整備に費やされました。政府は富国強兵を掲げ、軍需や繊維産業を重点的に育成します。

しかし財政難からインフレが発生し、松方デフレによる引き締めが行われました。その後、官営事業が民間に払い下げられたことで財閥が誕生します。政府の厚い保護と統制の下で成長する、日本独自の資本主義経済の形成過程を解説します。

📚お読みになる前に📚

財閥誕生の裏側!経済発展が遅れた「理由」

廃藩置県:藩を廃止して県を置き、明治政府が全国を直接統治する中央集権体制を整えた行政改革。
戊辰戦争:鳥羽・伏見の戦いに始まり、新政府軍が旧幕府勢力を制圧して国内を統一した国内戦争。
秩禄処分:明治政府が旧武士階級への家禄支給を完全に廃止し、公債を与えて特権を解消した経済政策。

「金は天下の回りもの」と言いますが、明治の経済発展は一筋縄ではいきませんでした。本格的な工業化には数十年を要したのです。なぜなら、1870年代は廃藩置県を行い、バラバラだった制度を統一する行政の仕組み作りに追われていたからです。この「土台作り」の苦労を知ることで、歴史の流れが鮮明に見えてきます。


さらに新政府には、戊辰戦争での莫大な戦費や旧政権の負債という重荷がありました。つまり、莫大な借金を抱えていたのです。特に、士族の特権をなくす秩禄処分財政的な大手術でした。現代で言えば、合併と同時に巨額のリストラ費用を処理するようなものです。これらの事後処理だけで、明治の最初の10年は飛ぶように過ぎ去ってしまったのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

明治維新ですぐに工場が立ち並んだわけではありません。最初の10年は、藩を県に変え、武士の給与を廃止し、戦争の借金を返すという「マイナスをゼロにする作業」に追われていました。近代化の華やかな側面の裏には、現代人が想像する以上に、地道で困難な行政改革という土台作りが存在していたのです。


重い年貢米を背負う農民のイメージイラスト


── では、最大の難関だった「税金」の話に進みましょう。

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地租改正と松方デフレ!農村激動の「真相」

地租改正:土地の価格を基準に課税し、収穫量に関わらず現金で納税させた明治政府の税制改革。
自由民権運動:藩閥専制政治を批判し、国会の開設や憲法の制定など国民の権利拡大を求めた政治運動。
松方デフレ:松方正義が主導し、増税と歳出削減、紙幣整理によってインフレ収束を図った財政政策。

工業化の最大の壁は税制改革でした。年貢米から現金納税へ変える地租改正は、農村部の猛烈な反発を招きます。この不満は当時高まっていた自由民権運動と結びつき、激しい一揆が頻発しました。政府は力で抑え込みましたが、近代化の痛みは想像以上に大きく、多くの血と涙が流された重い背景があるのです。


さらにインフラ整備を急いだ結果、巨額の負債とインフレが発生します。そこで松方正義は松方デフレと呼ばれる厳しい緊縮策を断行しました。これによりインフレは収まりましたが、農家や中小企業には大打撃となります。多くの農民が土地を手放し、ハワイなどへ移住せざるを得なくなったのも、この経済変動が要因です。

🔍 つまりどういうこと?🔍

安定した税収を得るための改革は、農民たちの生活を直撃し、激しい抵抗を引き起こしました。さらに、インフレ退治のためのデフレ政策が追い打ちをかけ、地方経済は疲弊します。明治の国家財政の健全化は、実は多くの国民の犠牲と苦しみの上に成り立っていたという、残酷な側面があることを忘れてはいけません。

💡 情報が混み合っていませんか?細かい時系列は、年号整理ページ にまとめてあります。是非ご活用ください。


近代的な紡績工場で働く女性工員のイラスト


── 次は、いよいよ誕生する「財閥」について見てみましょう。

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官営事業払下げと財閥!経済成長の「軌跡」

富国強兵:経済を発展させて国力を高め、軍事力を強化して欧米列強に対抗しようとした国家目標。
官営事業払下げ:政府が経営していた工場や鉱山などの事業を、民間の実業家や政商に安く売却した政策。
財閥:払下げにより巨大な富と権益を獲得し、日本の産業や金融を支配するようになった企業集団。

苦しい財政下でも、政府は富国強兵のため軍需や繊維産業の育成に注力しました。特に海外製品に対抗すべく国営工場で生産を始めますが、赤字が続きます。そこで1880年代、政府はこれらを民間に売る官営事業払下げを決断しました。この政策転換が、後の日本経済の形を決定づける大きな分岐点となったのです。


事業を買い取ったのは政府と親密な政商たちで、彼らは後に財閥となり経済を支配しました。日本の産業革命は自由競争ではなく、政府の手厚い保護下で進んだのです。国家目標に沿う事業に税金が投入され、企業は国の意向に従う。この「持ちつ持たれつ」の関係こそが、戦前日本の経済システムの基礎となりました。

🔍 つまりどういうこと?🔍

政府が主導して工場を作り、それを特定の商人に安く譲り渡すことで、強力な企業グループ「財閥」が生まれました。日本の経済成長は、政府と商人が二人三脚で進める官製資本主義の側面が極めて強く、欧米の純粋な自由競争とは異なる日本独自のユニークな発展を遂げたという点を理解する必要があります。


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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:政府主導の経済体制と日本の「特質」

明治の経済発展は、単なる技術の導入だけでは語れません。廃藩置県地租改正といった痛みを伴う改革を経て、ようやく工業化のスタートラインに立ちました。そして、政府が育成した事業を特定の商人が引き継ぐという独自のスタイルで成長を遂げたのです。この「官民一体」の構造を知ることは、現代日本経済のルーツを理解することにも繋がります。
この記事のポイントは、以下の3つです。

廃藩置県など基盤整備が最優先
地租改正が農村に与えた打撃
官営事業払下げにより財閥が誕生

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜ明治維新後、すぐに工業化が進まなかったのですか?

廃藩置県による行政の統一や、旧政権からの借金処理に時間がかかったためです。まずは国の土台作りが最優先課題でした。

Q2.松方デフレとはどのような政策でしたか?

インフレを抑えるための増税と歳出削減策です。財政は安定しましたが、農村部は深刻な不況に陥り、土地を手放す農民が続出しました。

Q3.日本の資本主義にはどのような特徴がありますか?

政府が産業を保護・育成し、財閥がそれに協力する国家主導型である点が特徴です。純粋な自由競争よりも、国の目標達成が優先されました。

各時代の FAQ は、FAQまとめページ で一気見できます。是非ご活用ください。

[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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