鎖国は誤解?日本と朝鮮・琉球・オランダの外交|5分de探究#076

江戸時代
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鎖国は誤解?日本と朝鮮・琉球・オランダの外交|5分de探究#076
江戸の日本は本当に世界から完全に孤立していたのでしょうか?


教科書で習った閉鎖的なイメージとは異なる、幕府が国益のために巧みに操った四つの窓口と、したたかな外交の実態を”5分”で紐解きます。

▼ この記事でわかること

Q. 江戸時代の鎖国は本当に国を閉ざしていたのか?


完全な孤立ではなく、徳川幕府政治的安定と利益のために四つの窓口を設け、相手を選んで通商・外交を管理していました。

江戸時代の「鎖国」という言葉から、日本が世界から完全に孤立していたと想像していませんか。実際には、徳川幕府は自らの政治的安定と貿易利益の独占を目的に、オランダ、中国、朝鮮、琉球王国という四つの窓口を厳格に管理していました。

特に対馬を経由した朝鮮との国交や、中継貿易で栄えた琉球王国との関係は深く、教科書的な「閉ざされた国」というイメージとは異なる実態がありました。本稿では、当時の外交の具体的な現場と、そこに潜む幕府の本音をわかりやすく解説します。

📚お読みになる前に📚

鎖国下で幕府が独占した「外交」

鎖国令:幕府が発令した、キリスト教禁止や日本人の海外渡航と貿易を厳格に統制する法令。
徳川幕府:征夷大将軍を頂点に置き、武士階級による支配と社会的な安定の維持を目指した統治機構。
政治的安定:内乱や外部からの侵略を未然に防ぎ、幕府を中心とする権力構造が揺らぐことのない状態。

「日本は世界から切り離されていた」。そう思い込んでいませんか。実は徳川幕府が目指したのは完全な遮断ではなく、「管理された窓口」の維持でした。一六三五年の家光による鎖国令も、危険なカトリック勢力の排除に加え、貿易による莫大な利益を将軍家が独占するためにどうしても必要な、極めて高度で政治的な措置だったのです。


幕府にとって最大の優先事項は政治的安定です。キリスト教がもたらす植民地支配の脅威や、西国大名が勝手に貿易を行い富を蓄えるリスクを徹底して排除する必要がありました。その結果、オランダと中国とは長崎で、朝鮮と琉球とは別のルートでつながる、四つの口を持つ巧みな外交システムが精緻に構築されていたのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

「鎖国」とは国を完全に閉じることではなく、「誰と付き合い何を輸入するかを幕府が独占的に決める管理システム」のことでした。海外からの情報の流入経路や貿易から得られる莫大な利益をすべてコントロール下に置くことで、徳川家の支配体制をより盤石なものにしようとする政治的な知恵だったのです。


出島の古地図。扇形の人工島にオランダ国旗が掲げられ、和船が出入りしている様子。


── では、具体的な隣国との関係を見ていきましょう。

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宗氏が繋いだ朝鮮通信使との「交流」

朝鮮通信使:将軍の代替わりごとに朝鮮国王が日本へ派遣した、数百人規模からなる祝賀外交使節団。
宗氏:対馬藩を治め、江戸時代全期を通じて日本と朝鮮の間の外交実務や貿易の仲介を担った一族。
新井白石:六代将軍家宣らに仕え、通信使の待遇を改革したり詩を通じた文化交流を行ったりした儒学者。

秀吉の侵略による断絶を修復したのは、一六〇九年の条約締結と対馬の宗氏の尽力でした。以降、朝鮮通信使が計一二回も来日し、その規模は三百人から五百人に及びました。彼らは厳選されたエリート集団で、儒学者である新井白石との詩の交換など、双方が敬意を持った高度な文化交流が友好的に確かに行われていたのです。


一七一九年に来日した申維翰は、大坂や江戸の物質的な繁栄に驚嘆しました。しかし裏では、日本側は「朝鮮は属国だ」とオランダ人に説明し、朝鮮側は日本を「海賊の末裔」と見下すなど、複雑な感情が渦巻いていました。それでも、日本の民衆は彼らの書く文字を神聖な宝物のように求め、道中で熱狂的に歓迎したと記録されています。

🔍 つまりどういうこと?🔍

政府レベルでは互いに自国の優越感を主張し合う建前上の緊張関係がありましたが、現場レベルでは活発な貿易と、知識人や民衆による熱心な文化交流が花開いていました。お互いのメンツを立てながらも実利を取るという大人の関係であり、海を隔てた両国の国境は決して閉ざされてはいなかったのです。

💡 情報が混み合っていませんか?細かい時系列は、年号整理ページ にまとめてあります。是非ご活用ください。


江戸時代の朝鮮通信使の行列。華やかな衣装を着た使節団が街道を練り歩く様子。


── 続いて、南の海の王国に目を向けましょう。

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中継貿易の富と薩摩藩による「支配」

琉球王国:沖縄諸島を統一して成立し、中継貿易で繁栄した、中国と日本の文化が混ざり合う海洋国家。
中継貿易:中国製品などの物産を一度自国に集め、それを他国へ転売することで利益を得る貿易の形態。
尚巴志:十五世紀に沖縄本島の三山と呼ばれた勢力を統一し、琉球王国の基礎を築いた第一尚氏の王。

尚巴志による統一以降、琉球王国「東アジアのクリアリングハウス」として莫大な富を築きました。中国の制度を模した行政官が、日本の侍のように二本の刀を差すという独自の文化が育ちました。しかし、一六世紀後半に西洋のポルトガル商人が台頭したことにより、その中継貿易の優位性は残念ながら徐々に失われていったのです。


一六〇〇年代に入ると、その地位はさらに危うくなりました。一六〇六年、家康は琉球への懲罰的な遠征をついに承認します。朝鮮出兵の失敗から対外戦争を避けていたはずの日本が、なぜあえて動いたのか。それは、圧倒的な武力の差があったからこそ可能な、計算された冷徹な支配の拡大だったといえるのではないでしょうか。

🔍 つまりどういうこと?🔍

琉球は中国と日本の狭間で繁栄しましたが、欧州勢力の進出による経済的衰退と、日本の強力な武士団の標的となることで、独立国としての自由を徐々に奪われていきました。武力を持たない平和な貿易国家は、弱肉強食の時代の波に翻弄され、大国の都合に飲み込まれてしまったといえるのです。


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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:管理された外交の真実

江戸時代の日本は、決して世界から断絶していたわけではありません。幕府は自らの権力基盤を守るため、外から入ってくる情報と利益を完全にコントロール下に置いていました。オランダ、中国、朝鮮、琉球という四つの窓口を巧みに使い分ける、極めて戦略的でしたたかな外交が、そこでは展開されていたのです。
この記事のポイントは、以下の3つです。

鎖国は幕府による貿易管理の手段
朝鮮とは通信使を通じた深い交流
琉球は中継貿易の富と侵攻の歴史

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜポルトガル人は追放されたのですか?

キリスト教の布教が、スペインやポルトガルによる植民地支配の先兵と見なされたためです。既存の統治秩序への脅威でした。

Q2.中国やオランダと、朝鮮との関係の違いは何ですか?

中国やオランダは長崎での通商関係のみでしたが、朝鮮とは対馬を通じて正式な通信、つまり対等な国交関係を結んでいました。

Q3.「鎖国」という言葉は当時からあったのですか?

実は後世の造語です。当時は単に海禁のような渡航制限の状態であり、完全に国を閉ざすという意識はまだありませんでした。

各時代の FAQ は、FAQまとめページ で一気見できます。是非ご活用ください。
[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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