日比谷焼打事件と日露戦争!なぜ民衆は暴徒化?|5分de探究#104

明治・大正
日比谷焼打事件と日露戦争!なぜ民衆は暴徒化?|5分de探究#104
日露戦争に勝ったはずの日本で、なぜ民衆は暴れ回ったのでしょうか?


勝利の裏に隠された政府の嘘と、怒れる人々の熱狂が日本の政治を大きく変えていく流れを”5分”で紐解きます。

▼ この記事でわかること

Q. 日露戦争に勝ったのに なぜ日比谷焼打事件は起きた?


期待された賠償金が取れず、増税に耐えた国民の怒りが、政府のプロパガンダとのギャップで爆発したからです。

1905年、日露戦争に勝利した日本。しかし講和内容を知った民衆は激怒し、日比谷公園から大規模な暴動へと発展しました。これが日比谷焼打事件です。なぜ勝利したはずの国民は暴徒化したのか?

背景には、政府の宣伝と現実の乖離、賠償金放棄による重税への不満がありました。この事件は単なる暴動にとどまらず、その後の大正デモクラシーへと繋がる、民衆の政治参加への目覚めという重要な意味を持っていたのです。

📚お読みになる前に📚

勝利の裏側!衝撃の「ポーツマス条約」

日露戦争:朝鮮半島と満州の支配権を巡り、新興の大日本帝国と大国ロシアの間で勃発した戦争。
賠償金:戦争の敗戦国が、勝戦国に対して支払わされる、戦争で生じた損害への対価としての金銭。
プロパガンダ:特定の思想や世論を意図した方向へ誘導するために行われる、政府や組織による宣伝活動。

皆さんは1905年の日露戦争の勝利について、どんなイメージをお持ちでしょうか。「小国が大国を倒した奇跡」として語られがちですが、当時の国民が感じたのは歓喜よりも衝撃でした。政府による徹底したプロパガンダにより「日本は圧勝している」と信じ込まされていたものの、蓋を開けてみれば現実は全く異なっていたからです。


アメリカの仲介で結ばれたポーツマス条約の内容は、国民を絶望させました。多額の戦費を借金で賄い、増税に耐えてきたにもかかわらず、期待された賠償金は一円も取れなかったのです。樺太の南半分や満州の権益は得ましたが、支払った犠牲とコストに見合うものではありません。この「期待と現実の落差」が、人々の怒りに火をつけました。

🔍 つまりどういうこと?🔍

政府は戦意高揚のために「圧勝」を演出しましたが、実際には国力を使い果たしたギリギリの勝利でした。国民「勝ったのだから賠償金で生活が楽になる」と信じていましたが、条約で賠償金ゼロという事実を知り、騙されたと感じて激怒したのです。生活苦にあえぐ民衆にとって、それは許しがたい裏切りでした。


新聞を読んで怒りを露わにする明治時代の人々のイラスト


── では、その怒りがどのように爆発したのかを見ていきましょう。

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怒れる民衆!激化する「日比谷焼打事件」

日比谷焼打事件:講和条約に反対する民衆が暴徒化し、東京の内相官邸や交番などを次々と焼き払った事件。
戒厳令:戦争や内乱などの非常時に、軍隊が行政権や司法権の一部を代行して治安維持にあたる法令。
河野広中:福島県出身の政治家で、日比谷公園での集会を呼びかけ、激しい対露強硬論を主導した人物。

条約調印のニュースが流れると、河野広中ら強硬派の活動家たちは、1905年9月5日に日比谷公園での抗議集会を呼びかけました。警察はこれを禁止しましたが、怒れる群衆を止めることはできませんでした。3万人以上の人々がバリケードを突破して公園に雪崩れ込み、政府への不満を爆発させたのです。これが日比谷焼打事件の始まりでした。


集会後、興奮した群衆の一部は暴徒と化しました。彼らは新聞社や外務省、路面電車や交番を次々と襲撃し放火しました。東京の交番の7割が破壊される異常事態に対し、政府はついに戒厳令を敷いて鎮圧に乗り出します。死者17名、逮捕者2000名以上にのぼり、東京は一時、無政府状態に近い混乱に陥りました。

🔍 つまりどういうこと?🔍

警察の禁止命令を無視して日比谷公園に集まった数万人の民衆は、集会をきっかけに暴徒化しました。怒れる群衆は政府関連施設や路面電車を次々と破壊して回る大規模な騒乱を引き起こし、警察だけでは手に負えず、政府は軍隊を出動させる戒厳令によってようやく事態を強制的に収拾させたのです。

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暴動の後に何かが変わったことを示唆する夜明けのイメージ


── では、この事件が歴史に何を残したのかを考えましょう。

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暴動の正体!目覚める「民衆の政治参加」

藩閥政治:薩摩や長州など明治維新で功績のあった特定藩の出身者が、政府の要職を独占した政治形態。
憲政:憲法に基づいて行われる政治のことで、国民の代表である議会を尊重する政治のあり方。
国民:単なる居住者ではなく、国家というひとつの共同体の一員としての強い自覚を持った人々。

この事件の最大の意義は、単なる暴力行為ではなく、民衆による「政治への異議申し立て」であった点にあります。それまで一部のエリートによる藩閥政治に従うだけだった人々が、自らを国家を支える国民であると強く自覚し始めたのです。彼らは、天皇の信頼を裏切るような無責任な政治を行う官僚たちに対し、憲政の常道に戻るよう要求しました。


明治政府が進めてきた「国民統合」の教育が、皮肉にもここで完成を見ました。人々は「おらが村の住人」から「大日本帝国の構成員」へと意識を変え、だからこそ国の決定に怒り行動を起こしたのです。このエネルギーは消えることなく、その後のシーメンス事件や路面電車運賃値上げ反対運動など、大正時代の民主主義運動へと受け継がれていきました。

🔍 つまりどういうこと?🔍

政府が必死に作り上げた「国民」という意識が、逆に政府への鋭い批判となって跳ね返ってきました。民衆は自分たちも国を構成する一部であると自覚し、一部の特権階級による独占的な政治を批判して、自分たちの声を反映させる正当な政治を求め始めたのです。これは民主主義への第一歩でした。


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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:民衆が主役へ躍り出た転換点

日比谷焼打事件は、日露戦争の講和に対する不満から生じた暴動でしたが、同時に日本人が単なる「臣民」から、政治に主体的に参加する「国民」へと脱皮する痛みでもありました。プロパガンダで隠された現実を知った民衆の怒りとエネルギーは、やがて藩閥政治を揺るがし、憲政を求める大きなうねりとなって大正デモクラシーへと繋がっていくのです。
この記事のポイントは、以下の3つです。

期待と現実の乖離が生んだ深い失望
東京中を火の海にした激しい破壊活動
臣民から国民へと変わる政治的自覚

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜ日本は賠償金を取れなかったのですか?

日本は連戦連勝でしたが国力は限界でした。ロシアは余力を残しており、戦争継続が困難だったため、日本は賠償金を諦めてでも講和を結ぶ必要があったのです。

Q2.この事件以前に大規模な暴動はなかったのですか?

一揆などはありましたが、政治的な要求を掲げた都市型暴動としては初の大規模なものです。地域ごとではなく、国家全体の問題として民衆が動いた点で画期的でした。

Q3.この事件は現代の私たちに何を教えてくれますか?

政府の情報を鵜呑みにせず、自ら考えることの重要性です。また、暴力ではなく言葉で政治に参加する権利が、先人たちの苦闘の上に成り立っていることを教えてくれます。

各時代の FAQ は、FAQまとめページ で一気見できます。是非ご活用ください。

[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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