原敬暗殺!普通選挙法が変えた日本の政治|5分de探究#106

明治・大正
原敬暗殺!普通選挙法が変えた日本の政治|5分de探究#106
原敬はなぜ暗殺され、日本の民主主義は崩壊したのでしょうか?


政党政治の光と影である普通選挙法と、治安維持法の矛盾。それらが招いた、軍部台頭と戦争への悲劇の連鎖を”5分”で紐解きます。

▼ この記事でわかること

Q. 原敬暗殺と普通選挙法は日本の政治をどう変えたのか?


政党政治を確立するも暗殺され、続く普通選挙法治安維持法の矛盾がやがて軍部の暴走を招きました。

「平民宰相」原敬は理想家というより、利益誘導と妥協を駆使して権力を握った現実主義者でした。彼は長老・山縣有朋と取引して本格的な政党内閣を樹立しますが、その強引な手法は反発を呼び、暗殺を招きます。

彼の死後、普通選挙法が成立し「憲政の常道」が定着しますが、同時に治安維持法も制定されました。この「飴と鞭」の矛盾した政治こそが、国民の不満と軍部の暴走を招き、やがて日本を破滅的な戦争へと突き落とす最大の要因となったのです。

利益誘導で権力を握った「平民宰相」

利益誘導政治:選挙民の支持を得るため、鉄道敷設や公共事業などの利益を地元に誘致する政治手法。
山縣有朋:明治政府の軍部や官僚を支配し、原敬が首相になるために手を組んだ政界の最大実力者。
原敬暗殺事件:政友会の利益優先姿勢を批判する右翼青年により、東京駅で現職首相が刺殺された事件。

原敬といえば「平民宰相」として民主主義の英雄のように語られますが、実像は少し違います。彼は利益誘導政治の達人であり、自らの地盤強化のためにインフラ整備と引き換えに軍の予算を通すなど、取引に長けた政治家でした。当時の最大実力者である山縣有朋に徹底的に取り入り、その信頼を得ることで首相の座を射止めたのです。


原の手法は機能しましたが、「国益より党益」を優先しているという批判も生みました。その結果、不満を持った右翼青年によって東京駅で襲撃される原敬暗殺事件が勃発します。彼の死は衝撃的でしたが、これを機に「首相は第1党の党首であるべき」という重要な前例が残り、新しい日本の政治スタイルが確立されたのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

原敬は純粋な理想家ではなく、古い体制を利用して権力を握った現実主義者でした。巧みな取引で政党政治の道を開きましたが、その強引な党益優先の姿勢が一部の激しい反感を買い、志半ばで悲劇的な最期を迎えることになったのです。つまり彼は、民主主義の光と影を背負った政治家だったといえます。


大正時代のモダンな街並みと、新時代の到来を予感させる群衆のシルエット


── では、原の死後に訪れた「大正デモクラシー」の正体を見てみましょう。

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元老から政党へ移行した「憲政の常道」

護憲運動:政党を無視した清浦内閣に対し、全政党が結束して内閣を倒し、政党政治を求めた運動。
憲政の常道:議会の第1党の党首が、自動的に首相に指名されるべきとする大正時代の慣例的ルール。
枢密院:天皇の最高諮問機関ですが、明治の元勲たちが死去したことで影響力を低下させた合議体。

原の死後、官僚出身の清浦奎吾を首相に据える動きがありましたが、政党側は猛反発しました。第2次護憲運動が巻き起こり、内閣は半年で退陣に追い込まれます。これを機に、第1党の党首が首相になるという憲政の常道が完全に定着し、日本は政党政治が当たり前に行われる新しい時代へと本格的に突入することになったのです。


背景には、かつて絶大な権力を誇った山縣有朋らが世を去り、天皇の補佐機関である枢密院の影響力が低下していた事情があります。しかし、これは真の国民主権の確立というよりは、権力の中心が「藩閥政治家」から「政党政治家」へとスライドしただけ、というエリート間での権力移動の側面も非常に強かったのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

「大正デモクラシー」とは、根本的なシステム変革ではなく、権力の担い手が交代した「漸進的な変化」に過ぎませんでした。政党は新たな支配層として、官僚に代わって国を動かし始めましたが、それはあくまで古い憲法の枠内での主導権争いであり、国民のための改革とは言い切れない側面があったのです。

💡 情報が混み合っていませんか?細かい時系列は、年号整理ページ にまとめてあります。是非ご活用ください。


投票箱に投票する人々の明るい光と、その背後に伸びる警察官の長い影


── では、この時代の光と影である「2つの法律」について考えましょう。

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飴と鞭で国民を統制した「1925年」

普通選挙法:納税額の制限を撤廃し、満25歳以上のすべての男子に選挙権を与えた画期的法律。
治安維持法:普通選挙法の成立と引き換えに、共産主義や無政府主義などの左翼運動を弾圧した法律。
中産階級:大正デモクラシーの主な担い手であり、当時の政党が主な支持基盤としていた都市市民層。

1925年、ついに普通選挙法が成立し、多くの国民が政治に参加できるようになりました。しかし、当時の政党はあくまで裕福な中産階級を基盤としており、決して左翼的ではありませんでした。彼らは投票権の拡大という「飴」を与える一方で、国体や体制を脅かす思想を厳しく取り締まる必要性を強く感じていたのです。


その結果、セットで制定されたのが治安維持法です。これは共産主義などの急進的な運動を封じ込めるためのもので、政党政治家たちもこぞって賛成しました。彼らは帝国の秩序を守りつつ民主化を進めようとしましたが、この法律が拡大解釈され、後に自分たちの首を絞め、軍部の台頭を許す最大の隙となってしまうのです。

🔍 つまりどういうこと?🔍

この時代の民主化は非常に「限定的」なものでした。権利の拡大と引き換えに監視社会化が進み、その矛盾がやがて官僚や軍部の反発を招き、破滅的な戦争への道を切り開いてしまうのです。民主主義を守るはずの政党自身が、その手で自由を制限する法律を作ってしまった皮肉な結果でした。


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── 最後に、この記事のまとめFAQでおさらいしましょう。

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まとめ:未完に終わった日本の【民主主義】

原敬の暗殺から普通選挙法の成立まで、大正デモクラシーは日本の政治を大きく前進させました。しかし、それはエリートによる「上からの改革」であり、治安維持法という副作用を伴うものでした。この脆いバランスの上に成り立った民主主義が、やがて来る軍部の暴走に対し、いかに無力であったかを私たちは知っています。
この記事のポイントは、以下の3つです。

利益誘導で政党政治を築いた現実主義者
憲政の常道はシステム内の管理者交代
治安維持法が軍部台頭の隙を作った

ここで得た小さな気づきが、明日のあなたの視野をほんの少しだけ広げてくれますように。

❓この記事のテーマに関するFAQ❓

Q1.なぜ原敬は「平民宰相」と呼ばれたのですか?

彼が藩閥出身ではなく、爵位を辞退して衆議院議員の立場で首相になったからです。特権階級に頼らない姿勢が国民に歓迎されました。

Q2.大正デモクラシーと現代の民主主義の違いは?

当時は主権が天皇にあり、選挙権も男子限定でした。現代のような「国民主権」に基づく完全な民主主義とは構造が異なります。

Q3.なぜ軍部の台頭を許してしまったのですか?

政党政治家が汚職などで国民の信頼を失ったことや、軍部が統帥権の独立を盾に政治介入を強めたことが主な原因です。

各時代の FAQ は、FAQまとめページ で一気見できます。是非ご活用ください。

[主な参考資料]
・佐藤信ほか編『詳説日本史(日本史探究)』山川出版社,2023
・国史教科書編纂委員会編『市販版 国史教科書』PHP研究所,2024
・笹山晴生ほか編『詳説 日本史史料集』山川出版社
出典:Wikimedia Commons
※当記事は上記の信頼できる書籍・史料に基づき作成していますが、わかりやすさを優先した独自の表現を含みます

🖋この記事を書いた人🖋

Alex Kei(学び直し歴史ライター)

早稲田大学創造理工学部卒。複数の教科書と専門書を読み比べながら、【大人の学び直し】に特化した記事を執筆しています。
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